大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和49年(行ケ)109号 判決

一 請求の原因(一)ないし(三)の事実は当事者間に争いがない。

二 そこで、審決を取り消すべき事由の有無について検討する。

(一)1 本願発明の要旨についての審決の認定については当事者間に争いがなく、右争いのない本願発明の要旨によれば、本願発明の画像記録装置は「記録装置と一体をなし記録用ウエブにチヤート目盛りを電気画像的に書込む電極構造体を構成する装置」を備えることが要件とされている。

2 ところが、この「チヤート目盛書込み電極構造体」について、審決は、振幅目盛(縦軸目盛)と時間目盛(横軸目盛)の双方を書き込むものに限らず、前者のみを書き込むもの、例えば予め時間目盛が書き込まれた記録紙の上に振幅目盛を書き込んで最終的にチヤート目盛となしうるようなものをも含むという解釈をとり、これを前提として、引用例のもの(これは右の後者に該当する。)と対比していることは、審決の趣旨により明らかである。

3 そこで、このような解釈を正当として是認できるかどうかについて考えてみる。

(1) まず、本願の特許請求の範囲についてみるのに、成立に争いのない甲第二号証によれば、本願特許請求の範囲(昭和四四年一〇月二日付手続補正書により訂正されたもの)には、チヤート目盛書込み電極構造体について、「振幅目盛用電極構造体を備えた上記のチヤート目盛り書込み電極構造体」と記載されているが、それに続く個所では、「振幅目盛り書込み電極構造体」の構成のみが記載され、時間目盛用電極構造体の構造について直接述べた記載はないことが認められる。

しかしながら、一般に「チヤート目盛」とは縦軸目盛と横軸目盛の双方を組み合わせたものをいうことは当事者間に争いがないから、文言上、本願発明における前記チヤート目盛書込み電極構造体は振幅目盛と時間目盛の双方を書き込む装置であると解するのが最も自然であるのみならず、前記の「振幅目盛用電極構造体を備えた上記のチヤート目盛書込み電極構造体」という記載は、「チヤート目盛書込み電極構造体」が「振幅目盛用電極構造体」と同一物ではなくて後者をその一部として備えていることを意味すると解するのが相当である。

(2) つぎに、本願明細書の発明の詳細な説明および図面を吟味してみると、前記甲第二号証によれば、本願明細書の発明の詳細な説明欄には、「従来、格子状の振幅と時間の目盛を予め印刷した紙を用いる図式記録装置では、紙牽引装置の速度の精度が記録された情報の時間目盛精度を制限するので、精巧な紙牽引装置を必要とし実際の紙牽引速度を制限するうえ、書込み針は紙上に予め印刷された振幅目盛に正確に中心を合わせていなければならないので紙が正確に横方向に導かれない限り記録された信号の振幅に誤差が入ることになり、このことが紙牽引装置を更に複雑なものとする」旨(明細書二頁二行~三頁六行)、また、「予め印刷された紙の周縁部に時間記号を記入する第二のペンを使用する記録装置または感光紙に時間記号を光線装置で記入する記録装置においては記録された信号の解釈や時間記号の解読が困難である」旨(明細書三頁七行~四頁二行)、従来の記録装置の欠点について述べた後、「本発明では、未印刷の電気画像チヤート紙の供給装置が使われ、記録装置は、紙が記録装置を貫通して引張られるとき紙上に振幅と時間との格子状の目盛を印刷する電極装置を備えている。このようにして、紙は記録された出来事の間の所望の空間的分離に一致する任意の速度で記録装置を貫通して引張られ、これにより紙引張り装置を大いに簡単にする。その上、紙を引張り導く装置の横方向の精度がゆるめられる。」(明細書四頁八行~一四行)と述べ、「本発明の主目的は、振幅並びに時間目盛を印刷する一体的装置を有する改良された画像記録装置を供することである。本発明の一つの特徴は、振幅と時間との目盛りを電気画像により印刷し、これにより記録装置の紙を引張る機構が簡潔にせられ且つ記録された信号図形の解読が容易にされている一体的装置を有する画像記録装置を供することである。」(五頁一一行~六頁一行)と述べた後、実施例として、時間目盛を書き込む電極7と振幅目盛を書き込む電極6または6´の両者を備えた画像記録装置が挙げられていることが認められる。

そうすると、本願発明の要旨をなす「チヤート目盛書込み電極構造体」は振幅目盛と時間目盛の双方を書き込むものを意味すると解すべきであり、前(二(一)2)に述べたような審決の解釈は是認できない。時間目盛を書込む装置も本願発明の要旨に含まれるものと解すべきである。

(二) ところで、引用例記載の記録装置は、記録ウエブに振幅目盛(縦軸目盛)を信号図形と連動して記載するもので時間目盛(横軸目盛)は予め記録ウエブに記載(印刷)されているものであることは当事者間に争いがない。

(三) そうすると、本願発明の画像記録装置は、引用例の記録装置とは構成を異にするといわざるを得ず、審決はこの相違を看過する誤りをおかしたことになり、この誤りは本願発明の進歩性の有無についての審決の判断の基礎をなしているから、この点において審決は違法といわざるをえない。

三 よつて、その他の主張につき判断するまでもなく、原告の本訴請求を認容すべきものとする。

〔編註〕 本願発明の要旨は左のとおりである。

記録すべき信号が加えられる入力ターミナルを構成する装置、可動電気画像記録ウエブに入力信号を表わす信号図形を書込むよう入力信号に応答する装置、記録装置と一体を成し記録用ウエブにチヤート目盛を電気画像的に書込む電極構造体を構成する装置、上記のチヤート目盛書込み電極装置と該記録装置とに記録用ウエブを通過させ、これにより記録装置がチヤートの目盛りと信号図形とを共通の記録用ウエブに記録するようになつている装置、記録用ウエブ上に一連の長手方向に向けられた振幅目盛を電気画像的に書込む振幅目盛用電極構造体を備えた上記のチヤート目盛り書込電極構造体を備えた画像記録装置にして、該チヤートの振幅目盛り書込み電極構造体が記録用ウエブの横方向に延び且つ記録用ウエブに係合するローラー電極を備え、該ローラーは記録用ウエブに書込まれる振幅目盛に対応する伝導性ある模様を表面に形成して居り、これにより該ローラーがウエブの運動により転動しウエブに振幅目盛りを電気画像的に書込み、且つ書込まれた静電像に顔料を塗着させる現像装置を備えていることを特徴とする画像記録装置

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!